ホーキング博士の亡くなった日と誕生日が偶然・・・  

3月16日産経抄より

英物理学者のスティーブン・ホーキング博士は、1942年1月8日にオックスフォードで生まれた。この日は、ガリレオが世を去ってから、ちょうど300年に当たっていた。76年の生涯を終えた日は、アインシュタインの誕生日である。

 

▼「宇宙はなぜ、どのように生まれたのか」。先達の2人が取り組んだ謎に、博士もまた挑み続けた。「現代でもっとも傑出した科学者」は、物理学におけるあらゆる賞や栄誉に輝いてきた。ノーベル賞だけに縁がなかったのは、その理論があまりに独創的で難解なために、いまだ検証が不可能だからだ。

 

▼88年に出版した『ホーキング、宇宙を語る』は、全世界で1000万部を超える大ベストセラーとなった。一般の読者向けに書かれた、現代宇宙論の解説書である。ただし、表紙にある車いす姿の写真から半生記と勘違いした読者は、失望したかもしれない。

 

▼21歳の時、全身の筋肉が動かなくなるALSと診断され、余命2年と宣告される。病魔と闘いながら、天才科学者となるまでの道のりについては、自伝の『ホーキング、自らを語る』にくわしい。

 

▼「人は皆違い、基準や普通の人間などというものはない」。ロンドン・パラリンピックの開会式での、博士の言葉である。自伝でも「病気は学究生活の妨げにはならなかった」と言い切っている。世界中を旅して要人と会見した。潜水艇や熱気球に乗り込み、無重力状態も体験した。

 

▼無神論者の博士は、「宇宙誕生に神は必要ない」との発言が宗教界から批判されたこともある。しかし、神様が博士をこの世に送り込んだとしか思えない。人類が宇宙の真実に近づくように、そしてその無限の可能性に気がつくように、との配慮からである。